企業とFacebookについての一考察

Facebookが変える、人と企業のつながり方

『ムダの山』と『小さな真実』

ずっと以前、まだFacebookなんてものが世の中になかった頃に、大手電気メーカーのエンジニアの方にお話を伺ったときのことです。

「一つひとつ技術を革新していくには、まさに血のにじむような努力が必要です。成果というのは簡単には得られません。たくさんの人とお金と時間と情熱が積み重なってできた『ムダの山』の上に、ポンとのっかっているのが『小さな進歩』という成果なのです。その『小さな進歩』を集積してできたのが製品です。新しい製品ができればまた次の『ムダの山』を築いていく。その繰り返しがものづくりなのです」。

まさに技術者魂を感じるお話でした。けれどその後、こう続けられたのです。

「それでも売れるかどうかはまた別です。どれだけ素晴らしい製品であっても、消費者に知ってもらわなければモノは売れません。だからマーケティングやプロモーションは大切なのはわかります。けれど、たった15秒のCMで言えることには限りがあります。我々が本当に伝えたいことは削られて、タレントさんの笑顔や派手なキャッチコピーに取って代わられる。伝えたいことが伝わらない歯痒さ、悔しさ。そんな気持ちをものづくりに携わる人間なら誰もが多少なりとも感じているのではないでしょうか」。

広告に携わる人間として、私は頭を下げるしかありませんでした。けれど、一方で私はその言葉にものすごく共感を覚えたのでした。なぜなら、その方がおっしゃる悔しさは、丁寧な仕事をする広告制作者であるならば、みな同じように感じていたジレンマだからです。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、交通広告、ビルボードといったペイドメディアはもちろん、パンフレットやホームページといったオウンドメディアであっても費用やスペースの制約があります。その結果、「伝えたいこと」よりも「興味をひくもの(アテンション)」をどうしても先に立ててしまう。

十分な取材をしてその製品や企業についてのたくさんのファクトを集めたとしても、ほとんどは表に出ません。広告制作とは、99%を捨てて1%に光を当てることにほかならないのです。そうです、たくさんの「ムダの山」の上にポンとおかれた『小さな真実』。それが広告なのです。

その『小さな真実』でユーザーのインサイトを揺さぶりたい。それが制作という仕事の本筋だと思ってやってきました。大好きなこの仕事ですが、99%を捨てる作業は私にとってものすごく辛いことです。なぜなら、その企業や製品を知れば知るほど、「伝えたいこと」がいくらでも見つかるからです。捨てるなんてもったいなくて仕方がありません。私のつくる広告なんかより、その「ムダの山」を眺めてもらった方がよほどその企業や製品のことをわかってもらえるのに…。ずっとそんな風に思っていました。


『共感』が人と企業をつなぐ時代

時代は変わり、今、人類はソーシャルメディアを手にしました。ソーシャルメディアは人と人とをソーシャルグラフでつなぎ、共感を伝播します。その特徴はいろいろありますが、大きくは5つ。

(1)常に変化する動的な存在であること。
(2)インタラクティブなコミュニケーションが取れること。
(3)365日24時間、日常的にいつでもつながっていること。
(4)『共感』が拡散していくしくみがあること。
(5)原則的にコストやスペースの制約がないこと。

中でもFacebookは人と人とのつながりの中に、企業が参加することを許されたソーシャルメディアです。ここでは企業は「人格を持った社会的存在」としての立ち振る舞いが求められます。

「人格」を別のいい方をするなら、「らしさ」です。
「社会的存在」を言い換えるなら、「何屋さんなのか」です。

気負ったキャラクターを打ち出して、「らしく」ない存在感を出そうとしてもここではすぐにウソがばれます。Facebookは動的なメディアですから、すべての小さなアクションから本性がにじみ出るからです。見せかけの人格を振る舞うことは決してできません。これがFacebookの怖いところです。

また、自らを「何屋さん」と定義するかも大切です。例えばここに二軒のスーパーさんがあるとします。一軒は自らのお店を「安全でおいしい食材を売る店」という看板をあげました。もう一軒の看板には「安さ日本一、お財布にやさしいお店」と書いてあります。当然ながらこの二軒は商品、接客、値段、店構え、客層どれをとっても違っているはずです。もちろん、Facebook上でもそれは同じ。他社のページを真似してもうまくいかない理由はそこにあります。

自分の会社がどんな「らしさ」を持った「何屋さん」なのか。とても基本的なことなのですが、そこをしっかり把握していないばかりに、ちぐはぐなコミュニケーションを取っているFacebookページがたくさんあります。ソーシャルメディアでは人と企業はフラットな関係にあります。気の合う人どうしが仲良くなるように、気の合う人と企業がつながっていくもの。では何が人と企業をつなぐのか?

それは『共感』です。

『共感』が人と企業をつなぐ時代がやってきました。もう子供だましのような「アテンション」はここでは必要ありません。いいえ、必要ないどころか邪魔な存在でしかありません。なぜなら、ここに集う人々は企業やブランドの本質を見抜けるほどに、十分に成熟しているからです。


『目に見えない資産』をアーカイブする

では、どうすれば人と企業の間に『共感』が生まれるのでしょうか。人と人の関係に置き換えてみればわかりやすいでしょう。「自分はこんな素晴らしい人間だ」とアピールしてきたり、「これを買って!今ならこんなにお得だよ!」と毎日売り込んでくる人間を、あなたは好きになれるでしょうか?

相手のことを思う気遣いができる人。
誠実で自分の仕事に真摯に取り組んでいる人。
ユニークで面白い人。
自分の本分をわかっている人。
センスがよくて独自の世界観を持っている人。

そんな人には自然とまわりに人が集まってきます。そして、何気ない立ち振る舞いの中にその人らしい個性を感じたときに、人は人を好きになります。その人が日々どんなことを考え、どんな生き方をしているのか。その人のすべての行為の中に見え隠れする『小さな真実』。そこからその人の『本質』を、人は自然に感じ取る力を持っています。

企業と人の関係も同じ。
これまで会社の日常の中に存在する『小さな真実』に光があたる機会はなかなかありませんでした。そこにこそ本質につながる扉があるのに、メディア側の制約がそれを許してくれませんでした。けれど、その不自由さからようやく解放されるメディアができたのです。どうぞFacebookでは普段の何気ない日常の中にある『小さな真実』を伝えて下さい。スペースに限りはありません。コストもかかりません。
さあ、やっと「ムダの山」に光があたるときがやってきました。私はずっとこのときを待っていました。あなたの企業の日常の中で、毎日繰り返される当たり前の努力を、うれしさや喜びが生まれる様子を、情熱が凝縮する瞬間を、思う存分表現して下さい。

積み重なった試作品の数々。
先輩のようにうまく仕事ができなくて悩む新入社員の姿。
イベントに集まった子供たちに笑顔で話しかけるスタッフの表情。
サプライズでメンバーの誕生日をお祝いするチームメンバー。
新商品に込められた開発メンバーたちの思い。

人と企業を『共感』でつなぐ事実(ファクト)は、あたりまえの日常の中にあります。それらはすべてバランスシートには載っていないあなたの会社の『目に見えない資産』です。Facebookページの中に『小さな真実』を描いた投稿を積み上げていけば、そのページはいつの日かあなたの企業の『目に見えない資産』のアーカイブとなっていることでしょう。
日本中の企業のFacebookページがそんな風になる日がくることを、密かに私は夢見ています。

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